3月18日水曜日
しばらくぶりの投稿になります。雪崩事故以降、特に問題も無かったので間があきました。山荘付近の雪は例年の8割ほどになっています。一昨日も50cm程積もりました。下界は桜も咲き始め春モードですが、山はまだまだ冬に逆戻りすることがあるので要注意です。今週末は連休だし、3月末は入山者が増えますから、またまた注意喚起をいたします。

昨日はワカン(スノーシュー)を持たずにきた方(単独)が、「山荘分岐までは来れたけど、その先山荘までが時間かかりそうなので行けません」と午後電話がありました。そりゃそうですよ。ツボアシでは昨日の雪では無理です。HP内の「積雪期に入山の方へのお願い」に詳しく書いてますが、他人のトレースをあてにしてはダメですよ。土日なら入山者が多くそれでも来れるかもしれませんが、平日でしかも降雪直後ではこうなってしまいます。平日単独は特に気を付けましょう。まだまだ降るかもしれません。それに降らなくても、気温が上がって雪が緩みだすと、今まで歩けた雪面が、ズボズボと潜ることもあります。ちょっとでも軽くなんて考えずに、「備えあれば憂いなし」、必要な道具は持ってきましょう。
更にもう一点。15日の夕方警察から「視界が悪く自分の居場所が分からなくなり、110番してきている人がいる」と連絡ありました。話を聞いていると位ヶ原の疎林の中のようです。日没が迫り吹雪だしたので、ビバークしてもらい翌日出動となりました。翌朝下から来て頂いた救助部隊のメンバーと捜索に行くと、ルートから100m程離れた場所で無事発見できました。わずか100m、視界が良ければ何も問題なかったでしょう。しかし視界が悪くなったため不安になり行動できなかったのでしょう。110番してからの行動、無闇に動かず雪洞を掘って一晩過ごした、これは良かったと思います。しかしながら、そこに至るまでの行動には疑問符がいくつも付きます。当日は昼過ぎまで天候良く、その後急速に悪化してきました。でもこれは予報通りで、午後の急変も想定内です。どうしてもう少し早めに下山し出さなかったのか。そして地図さえ読めれば下山ルートはすぐ側にあるということが分かるはずです。地図とコンパスを持っていたのか。地図読みが苦手だというのなら今はGPSもスマホもあります。そういった準備をしていなかったのか。行きに天気が良いとあまり気にしない人が多いですが、帰りのために振り返ってルートを確認していたのか。行きのトレースは吹雪けば消えてしまいますから。どれもこれも大事な事です。積雪期に単独(この方も単独)で入山するなら上記の様なことは当然出来ていなければいけないということです。単独入山のリスクをもっと真剣に考えましょう。
そう思っていた矢先に、さらにまた問題が。昨日お客さんがキャンセルになってから急きょ仕入れに下山しました。3時前です。昨日も午前中は天候良かったですが午後悪くなりました。こんな時間ですから誰とも会わず下まで降りました。そして今日小屋に戻ってみると、不審なトレースが残っていて、明らかに人が今朝小屋から出てきています。中に入ると置き手紙があり、「日帰りのつもりが天気が悪化して下山できなくなり、一晩泊めてもらいました」とあります。そういったこともあるかもしれないと思い施錠はしていません。やはりこれもいくつもの疑問符が付きます。昨日の天候も予報通りです。登りにラッセルがあり時間がかかったのかもしれませんが、下山時刻を何時に考えていたのでしょうか。私が3時前に下山始めた時は、雪は降っていましたが視界は200m程あり、行動には何も支障はありませんでした。ただラッセルが少しあっただけです。連絡先がわからないので詳しく話は聞けませんが、どういった行動をしていたのか不思議です(ちなみにツボアシではなくスキーの跡が残ってました)。

この3つの事例をどう考えますか。二つ目は警察沙汰となりましたが、他の事例もそうなっていてもおかしくありません。自分の力でこの時期に山に入れるのか。それだけの力量が備わっているのか。もう一度しっかり自問してから入山してください。
今後も安全登山の実行をお願いします。